血がにじみ、詩音は腹を蹴られて咳き込む。

「ほら!言えよ!お前は自分の命が惜しくないのか?」

惜しくない?

そんなの、惜しいに決まってるじゃない。

私だって、死にたくない。

でもここで事件のことを言えば、叶亜たちにも迷惑がかかるかも……。

なら私は死んでも言わない。

「ほんとに見てないから!……それに、どっちにしろ私を殺す気なんでしょ。なら、言わなくても言っても変わらないじゃない」

本当に殺す気がないなら、取り引きのことだって言わないだろうし、それを言うってことは、詩音はどちらにせよ殺されるということだ。

光が薄気味悪い笑みを浮かべ、詩音の右腕を切りつけた。

「――っ!!」

服が血で染まる。

傷は思ったより深く、腕が火傷したように痛む。