ニヤッと笑ったときに見える黄ばんだ歯は、みていて気持ちが悪い。

「本当のこと言わねぇと、刺すぞ」

隣の光がナイフを持つ手に力を入れた。

だが、恐怖は感じなかった。

叶亜もあの暗号を解いた。

なら、きっと助けに来てくれるはず。

こいつらの罪も全部推理で暴いてくれるはず。

……たとえ、私が死んでも。

「ほんとに道に迷ったのかよ。もしかして、もっと別の意味があったとか?」

「俺たちさ、大事な取り引きしてたわけだよ。……見られたら、殺さなくちゃならねぇんだ」

大事な取り引き……。
きっと、麻薬のことだろう。

「見てません。何ですか、それ」

「嘘吐くんじゃねぇよ!!」

男が詩音の腹を思いっきり蹴った。

「うっ!!」

後ろに倒れる際に、首筋をナイフの切っ先がかすった。