詩音は手首をガムテープで拘束され、首筋にナイフを突きつけられていた。

ひんやりとした感触が、全身に伝わる。

少しでも動けば、刺されてしまうだろう。

詩音を囲む大柄の男たち。

ナイフを突きつけている男は、一目で分かった。

彼が、犯人の山崎光。

くっきりとした彫りの深い顔に、茶色く染めた髪の毛。

ワックスでくしゃくしゃにセットしている。

一見みれば、かなりの整った顔立ちの人物だが、犯人となればその顔さえも悪魔に思えてしまう。

「君さ、何してたの?あんなところで」

詩音を取り囲む男たちの中の一人が、詩音に顔を近づけた。

30歳前半くらいの男だ。

「別に。道に迷ってただけです。」

「道に迷って、男と電話してたわけ?」

男が詩音の携帯電話を踏み潰した。

散らばる部品。