エルは詩音を見るなり、ニッコリ笑った。
「Do you return now?」
(もう帰るの?)
英語が苦手な詩音だったが、エルと仲良くなりたいという一心で、英語を勉強し始めた。
おかげで簡単な日常会話程度は話せるようになった。
「Yes. So. The L is what; here?」
(うん。そうなの。エルちゃんはなんでここに?)
エルはその質問に答えず、ただニコニコしている。
エレベーターに乗り、1階のボタンを押したとき、隣にある点字が目に飛び込んできた。
大学だけじゃない。最近はショッピングモールなどでも、エレベーターのボタンのそばに点字がある。
不思議なことじゃないのに、その瞬間、詩音の中でモヤモヤしていた何かが、全て繋がった。
舞の携帯電話を取りだし、その恐ろしい真実に唇を震わせる。