「別に。僕はあいつの無様な姿がみたいだけですよ。実際に、あいつが僕の作戦通りに動いてくれて、満足でしたし」
「タチわりぃな。お前」
阿部が苦笑する。
「……詩音って、昨日の取り調べに来てた女の子ですか?」
綾華が聞くと、阿部が「そうだよ。」とうなずいた。
「ついでに言うと、叶亜の彼女だ」
「阿部さん。それ以上言ったら、ナイフで心臓突き刺して、取りだし、フライパンで焼いて包丁でみじん切りにしてから、川の底に沈めましょうか?」
「……いや、もう何も言いません」
叶亜の怖いところ。
それは、怖いことを早口で、おまけに真顔で言うところだ。
「……彼女、様子どうでした?」
「あ?……やっぱり少し元気なかったよ」
阿部が前を向いたまま答える。
それはそうだ。
友達が容疑者なんだから。