まさか、『乗れよ』なんて言われるとは、夢にも思ってなかった。
綾華は素直に礼を言うのが悔しくて、傘をとじながら助手席におさまる。
「最初からそのつもりだったので、ご安心を」
「うわっ、素直じゃねえな。叶亜に播磨のコンビか……。最悪だな」
阿部がラジオをつけながら、小さく呟いた。
「阿部さんの存在が一番最悪ですよ」
すかさず、叶亜が一撃をくらわす。
「うるせぇな!!……というか、お前は良かったのかよ」
「何がですか?」
「詩音ちゃん、連れてこなくて……。あの子に遠山葵の無実を証明するのは無理だって伝えるために、あんな遠回しなことしたんだろ?」
バックミラーに映る叶亜の表情が、どことなく寂しい。