そこには、傘をささずにニヤッと笑っている車イスの男――叶亜がいた。
「あなた……」
「おい、お前!なんで俺が女子大生に興味なかったら、上からなんだよ!?」
阿部が怒った口調で叶亜にむかって叫んだ。
叶亜は後部座席に乗り込みながら、
「自分に自信があるんだなって。出会い系サイトで阿部さんの写真だしたら、見た人全員吐いて全国の救急車が一斉に出回りますよ」
と早口でまくしたてた。
「人の顔に対して、失礼なこと言うじゃねえか。俺は別に結婚願望なんてねぇよ」
阿部は舌打ち混じりに言うと、綾華をみた。
「お前、車は?」
「ありません」
「じゃ、乗れよ」
阿部が助手席を指差す。