綾華は外苑大学の駐車場に来ていた。
一台の車の前で傘をさして、ある人物を待っていた。
まったく……どこほっつき歩いてるのか。
何度目かのため息を吐いたところで、大学から目的としている人物が出てきた。
綾華の姿をとらえると、「げっ」と後ずさる。
阿部雄三。綾華の下僕だ。
「は、播磨……っ。なんでお前、ここに」
「何を言ってるんですか。阿部刑事は私の下僕と言ったはずです。勝手に行動なんて許されません」
「知り合いに用があったんだよ。」
ぶっきらぼうにそう言うと、阿部は運転席に乗り込んだ。
「知り合い?出会い系サイトか何かで知り合った女子大生ですか?」
「ちげぇよ!!生憎、俺は女子大生は恋愛対象外なんでな」
「奥さんいないくせに、ずいぶんと上からですね」
雨の音に混じって後ろから聞こえた声に、綾華は振り返る。