詩音は立ち止まり、携帯電話を取り出す。 電話帳を開き、ある人物の名前をクリックする。 『東雲叶亜』 その文字が表示され、通話ボタンを押すかどうかで迷う。 だが、詩音はそっと携帯電話をしまった。 私は一体どうすればいいんだろう。 考えたって分かるはずのない問題を、何度も何度も頭の中で繰り返す。 「……どうしたらいいの」 ポツリと呟いた詩音の言葉が、夜の空にゆっくりと吸い込まれていった。