「親友の恋人を奪っておいて、自分の無実を証明してくれ?ふざけないでよ!!私は、葵の無実を必死で証明しようとしてた!葵は、きっとそんなことしないって……信じてたのに」

要するに、詩音の葵を想う気持ちは葵によって裏切られたんだ。

どうしようもない、憎しみと悲しみが胸に込み上がってくる。

「最低っ……」

詩音は葵を置いて夜道を走った。

やけに冷たい風が詩音の頬を撫でる。

思い浮かぶ、叶亜のあの言葉。

『人は一人で生きて一人で死ぬんだよ。友達や恋愛なんか、そのへんの石ころと同じだ』

葵が舞を憎んでいたのは本当だったの?

そんな葵を信じていた私はバカだったの?

きっとあなたに聞けば、『自覚してるのか。えらいな』なんて言うんだろうけど、今はそれを言われた方が安心する。