自分の部屋でごろごろしているうちにいつの間にか寝てしまったらしく、とっくに夕飯の時間は過ぎていた。

 ぼーっとした頭で階段を下りていく。

「―――」

 俺は次の瞬間、視界に入ったものを見て、動けなくなった。

 玄関で汚れた男用のスニーカーが結衣の靴のとなりに並んでいた。

 固まったままの俺を見つけて、結衣がリビングから顔を覗かせた。

「お兄ちゃん、さっきから呼んでたんだよ?寝てたの?」

 俺の視線は次に、リビングの扉の中、テーブルに座る少年にくぎづけになった。

「もうみんなには紹介したんだけど、彼は同じクラスの―――」

 結衣が何かしゃべっているが、椅子から立ち上がって俺のほうへ近づいてくる少年のことで頭がいっぱいになっていた。

 真新しい制服の男は、無邪気に笑いながら頭を下げ、よくとおる声で自己紹介している。

 作り物でない、妹の理想の男。

 俺は妹に導かれるままリビングに入って椅子に腰を下ろす。

 五人での夕飯は、ほとんど喉を通らなかった。