それからすぐ、誰が見ても妹の様子がおかしくなった。

 あんなに楽しそうに生き生きとしていた表情は、いまはその面影すらない。

 少しの刺激で泣き出し、学校も休みがちになっていった。

 俺は兄として妹の部屋に様子を見に行った。

 結衣は布団の上で何をするでもなく、天井を見ていた。

「なんで男子って変わっちゃうのかな?」

 結衣が目を見開いたまま、ポロポロ言葉を吐き出した。

「……お兄ちゃん、あの子には悩みの影なんて少しもなかったんだよ?太陽みたいにいつも笑ってたのに、なんで急にあんなになっちゃったんだろう」

 結衣は、自分の言葉にまた静かに泣き出した。

「お兄ちゃん、なんで?なんでなの?」

「大人になっただけだよ」

「私は、無邪気な彼が好きだったのに」

 泣き続ける結衣に、俺はいつものように近づくことができず、扉の傍でずっと立ち尽くしていた。