ご飯も食べ終わり、食器を洗っているとセシルが忍び足で私の背後に近寄る。

無論、こちらには丸見えだし、セシルの目的も分かっているからあえて振り向く。

どうせくすぐって私の反応を楽しもうとしてるんだろうから。

セシルは私の予想外の行動に目を丸くしている。


「何ですか?お手伝いなら歓迎するけど。」


完璧な笑顔で皮肉を込めて言ってやるとニヤニヤし始める。

皮肉を言われて笑うってこいつMなの?

セシルはひじで私をつついてくる。


「好きな人誰だか目星ついた?」

「別に。」


そっけなく答えたつもりなのに、セシルは更にニヤついた。


「恋してることに気づいたんだね。」

「なっ!!」

「で、誰!?」

「さぁ…」

「はぐらかさないでよ!!」

「本当に分かんないんだってば!!」

「もしかして…俺!?なんちって」

「絶対ないからヤメテクダサイ。」


食器洗いに視線を戻す。

セシルはちょっと態度を改めて聞いた。


「ユイの好みは?

俺様?ドS?ほんわか?」


なぜにその三択。

ってその順、左からフウト、マシュー、ハヤテでしょうが。

呆れを通り越して笑える。


「ユイのことだからフウトはないとして…」

「俺がなんだよ。」

「ぎゃっ」


セシルがフウトに首根っこを掴まれる。

そのまま揺さぶられ、セシルはごろーんと転がされた。

フウトは近くにあった椅子の背に腰かけた。

真顔でフウトがこう言った。


「で、誰なの、ユイの好きな人ってのは。」


聞き耳立ててたな、こいつ。

私は心の中で密かに舌打ちをした。