となって今に至るけど…

男の攻撃は段々スピードを増してる。

さっきからずっと避けっぱなし。

だってくらったらべたべたするんでしょ?

汚いの気持ち悪いもん。

おかげで周りは蜘蛛の巣だらけ。

すると突然


「助けてくれぇー!!」


と叫び声が聞こえた。

男の攻撃が緩む。

千里眼で周りを見渡すが周囲には声の主はおろか人自体いない。


「…秀。一体何をしているんだ。

超能力がないからと言って、私はお前のことを差別なんてしない。」


男は私の後ろを見透かすように見つめる。

私の少し後ろに立っているのは…


「嘘つくな!!

じゃあどうして、あんな身分制度を作ったんだよ!!

俺は富裕層がいい扱いを受けるのも無責任者が酷いことをされるのも嫌だ!!

ただ、普通に生きていたい!!」


秀。

そう呼ばれてそう男に向かって叫んだのは紛れもない、

マシューだった。

そうだ、この男…

何処かで顔を見たことがあると思ったら、国会議員の浅間直樹だ(アサマナオキ)。

じゃあ、マシューはこの人の息子なの?

男は呆れたようにマシューを諭そうとする。


「馬鹿を言うんじゃない。

官僚の息子が責任放棄者でどうするんだ。

身分制度を復活させた私の、その息子が責任放棄者では、世間にどんな顔をすれば…」

「結局自分の利益の為じゃないか!!

父さんはいつもそうだから母さんが心労で死んだんじゃないか!!」


え…

お母さんが死んでる?

お父さんのせいで?

でもそれは結局、原因なんて分からないんじゃ…

その疑問はかき消される。

マシューの大きな瞳が更に見開かれ、目が橙色へと一瞬で変わる。

目の色が純粋な橙色一色になった時、不意に耳にキーンと高いモスキートのような音が耳に入ってきた。

男はその場にうずくまる。

両耳を手で抑え、歯を食いしばり、その手からはドロドロと白い液体が零れだしていた。


「くっ…秀…やめるんだッ…!!」

「自業自得だよ。

俺の能力に殺傷能力はない。けど…」


間を置いてマシューは口元を歪めた。


「鼓膜を潰すことくらいは出来る。」