抱きしめられて
キスをされた。

あまりに甘くて
溶けそうなほど。

こんな刺激を
手放すなんてあたしは
厭だ、と感じていた。

何事もなかったかのように
互いに服を着た。

先に着替え終わって
彼を見ていた。


「…ありがとう(笑)」


曲がっていたネクタイを
直してあげたら
無意識のうちに顔が
近くに寄っていて。

……キス。


帰りたくない。
大阪まで連れて帰ってよ。



「バイト先、通り道なら
  途中まで乗せてくよ?」

何度も聞かれた。

水野さんも
あたしと離れたくないって
思ってくれてたのかな…

だけどバイト先には
駅まで自転車で
行かなきゃならなくて。


帰りの車のなかで
彼の話を聞いた。

お父さんは小さい頃に蒸発
お母さんは3年前に他界。

ひとりぼっちで
寂しくないかと聞いたら
もう慣れたよ、と
笑い飛ばしていた。

我慢、してないのかな。

あたしがそばにいたい。
あたしが癒しになりたい。
そんなことまで思って。


神様は意地悪だ。

こんな時ばかり
時計を早く進める…