「イェース♪」


「……」


とりあえず溜め息を一つ。


フー。


「つまりは今この瞬間も、過去の記憶が消えてるってことでいいんですね?」

「物分かりがいい娘は私、好きよ」


どうやら正解らしい。


「三日ね。あなたの記憶の限界(リミット)は。三日前の記憶は綺麗サッパリ消えちゃって、変わりに《作り物》の記憶になっちゃうみたい」


そう言うとみきりさんは煙草を灰皿に押しつけ、新しい一本を取り出して火をつけた。


おぉ、噂の緑の火が出るライターだ!


「ほら、私と会った筈の三日前を思い出そうとしてみて」


(三日前……)


思い出せるのは……

かき氷食べてぇ
プリン食べてぇ
アイス食べてぇ
コーラ飲んでぇ
プリン食べてぇ
寝てた。


酷っ!

プリンだけ二食って……


みきりさんには「会った気はしないです」とだけ言うことにした。


「それで、私にそんな記憶障害みたいなことを起こしてる原因と犯人は誰なんですか?」

「鋭い質問だねぇ。でもぉー……ぶっちゃけ、実は私も知らないのよね〜」


(胸揉むぞ!!)


「ふざけすぎだ馬鹿。その胸揉まれるぞ?」


いつの間にか、六が私の後ろに立っていて、それでもって私の心内を代弁してくれた。


「そんな、ふざけてなんてませんことよ。ホホホ」


あれがふざけてないなら、私はお釈迦様になれるな。


「まぁ、気を悪くすんなよ。《スー》はいつも―――」


ヒュッ。

煙草がダーツのようにみきりさんの手から離れて飛んで……


「あっっっつ!!!」


六の眉間にヒットした。


「そのあだ名はヤメテ」


突き刺さるような、六に向けられる姿勢。

鳥肌が立つほどゾクリと寒気がした。

こっちが本物か……!


今ならブラックだろうが微糖だろうが無糖だろうがいけそうな気がします。