「怪力……ち、違いますっ!」


「違うのか?」


私が最初にアノ人とした会話がそれだった。


ひょろっとした長身のおじさん……いやいや青年のよう……いやいやいやいや、よく見たら少年のような童顔の男の人が私を見下ろしている。


第一印象


友達にはなりたくないな。


そんな酷い印象を与える原因は、(何が気に入らないのだろう?)眉間にMt.富士並のしわが寄った仏頂面だ。


胸元を開けたワイシャツに青のジーンズといったラフな格好(ネクタイはクールビズだった)のこの人、しかめっ面じゃなければ結構イケメンの分類だろうに。


「ドアは思いっきり吹っ飛んじまったが……まぁいいや。おかげで部屋の気温が2℃上がったみたいだが……まぁそれもいいや」


前言撤回


うちわでパタパタと扇ぎながら面と向かって思いっきり皮肉を言われたが、それこそまぁ事実なのだから仕方がない。


実は言い返す『お言葉』が喉まで出かかっていたのだが、これから依頼するかもしれない側としては、とりあえず下手にでておこうとグッと飲み込んだ。





「とりあえず自己紹介といこうか。俺はキッド。ほい、これ名刺。んでそこの……」

「ちょ、ちょっと!何ですか《キッド》って!名刺には《七和 六》(ななわ ろく)って書いてあるじゃないですか!」


確かに名刺には『Smile!探偵事務所 所長兼雑用 七和 六』と書いてあった。


「ああそれ?無視だ無視。キッドの方がカッコイいだろう?」


そ、そう?


「で、そこのデスクに寝てるのが助手のワト―――」

「フニャーーー!!」


いつの間に起きていたのか、漆黒の黒猫はデスクからピョンと飛び降りると男の肩に駆け上がった。


「ちっ、起きてたのか。改めてこの事務所のマスコット兼、今のところ俺の助手の『ホームズ』だ」