みきりさん?


私にはさっぱりと意味が分からなかった。


「だってあの人、私達の事助けてくれたじゃないですか」


そうだ。あの時は確かに死にかけた。


思い出すと背筋に冷たいものが走るのを感じた。


いったい何人の日本人が、次の瞬間には殺されているかもしれない状況に立った事があるのだろう。


「じゃあ、何であいつはあんな途中で俺達を車から下ろしたんだ?こっちは命を狙われてたんだぜ?」


……確かに。


考えてみればそうかもしれない。


「だが俺達は無事何事も無く平和に平凡に退屈に帰ってくることが出来た。おかしいだろ」


「じ、じゃああの六を撃った人は?」


「ギルド」


そこで六は首を大きくゆっくりと横に振った。


「公にはできないような仕事を専門で扱う国家機密機関。それが《ギルド》。鷲見の職業はもう言ったろ?《政府特別顧問調査室》……」

この二つは、なかなか裏同士の交友があるらしいと六は言う。

「おおかたギルドのスナイパーの友達(フレンド)にでも協力してもらって一芝居打ったんだろ」


「でも芝居だったら撃たれないんじゃ……」


実際六は撃たれてふっ飛ばされてたっけ。


「いや」と六は真っ向から否定してきた。


「あの女は俺が《頭以外は》不死身って知ってっからな。『頭じゃなけりゃ好きなとこ吹っ飛ばしちゃって♪』とかなんとか言ったんだろ。ギルドのスナイパーが腕とか狙う筈がねぇんだから」


ナルホド。


「あいつ昔っから《躊躇い》と《女っ気》は持ち合わせてねーからな……」


ああ、それは何となく分かる。


でもここで、疑問がぐるぐると私の頭に渦を巻き始めた。


「なら、なんでみきりさんがそんな事を?」


「……あんたの記憶だよ」