「たま!?」


私は駆け寄ってニャーと鳴く三毛猫を抱き上げると、頬を擦り寄せた。


「ああ……たま……」


頬の皮膚越しにたまの体温が伝わってくる。


(あったかいな)


たまは嬉しそうに目を細めると、もう一度ニャーと鳴いた。


「やっぱりここか」


六は、まるでたまがここにいるのは当たり前のような顔をしながら木製のデスクに腰を落ち着かせた。


どこからかホームズがトコトコ歩いてくると、軽い身のこなしで六の肩に飛び乗る。


どうやらホームズの指定席らしかった。


「ただいま。留守番ご苦労。異常無しか?」


黒猫はたまより少し低い声でニャーと返事した。


「六……さん……」


なぜか《さん》をつけてしまった私。


「答える。まあ待ってろ」


ぶっきらぼうに言うと六は目をつぶり、ホームズの背中や喉を優しく撫で始めた。


『Feeling』


道すがら六から教えてもらった。


『モノ』の残留思念、それを読み取ること。


それには物凄い集中力を使っちゃうらしい。


故に聞きたいことがチョモランマの永久凍土のようにあっても(たくさんってことね)、押し黙るしかない。


どうせ話しかけたところでシカト決め込むに決まってるもん。


頑固。

おまけに自分勝手。

そして自意識過剰。

天上天下唯我独尊とか目指してるのかもしれない。


六のだんまりで、私と六の間にしばらくの沈黙が流れ、勿論それを破ったのも六だった。


「くそ!鷲見のやつ。俺達は初めからあいつの手のひらの上で踊らされてたんだ!」