トンッ


六に血だらけの手で突き飛ばされる。


次の瞬間、私が屈み込んだ地面が音を立ててえぐれた。



……怖い。


怖い。怖い。恐い。


コワイ。



「早く……逃げ……!」


六が叫ぶ。


状況を理解するにつれて、純粋な恐怖が襲ってきた。


《誰かに殺される》


一体誰に?


顔も知らないような人に?


「い……や」



パシュン



キキィー!


凄まじいブレーキ音と共に、さっきのBMWがドリフトしながら目の前に停車する。


同時に銃弾が車の装甲に当たる音がした。


後部座席のドアが勢いよく開いた。


「みきりさん……」


「ぼおっとすんな!乗れ!早く!乗らないなら死ね!!」


むちゃくちゃ言う。


「は、ふぁい!」


私は自分でも以外なパワーを発揮すると、倒れる六を引っ張って車になだれ込んだ。


銃弾がフロントガラスにぶち当たったが、音だけでガラスに変化は無い。

「馬鹿が!この車(BM)は特製特注防弾加工だってーの。壊したいっちゅーなら対戦車砲でも用意しろっつーんだ!ばーかばーか」


どうやらみきりさん、テンションが上がるほど言葉使いが乱暴になるらしい。


「しっかり掴まってなよ。跳ばすわよーぅ♪」


「え?でもまだ……」


私と六の足が半分外に出ていた。

もちろん扉は開いている。


ぶうううううん!!


アクセル全開らしかった。


こんなガソリン代が馬鹿にならないご時世に……なんて冷静に考えたかった、私。


ギリギリと嫌な音を立てながら、黒い外国車は一般国道をぶっ飛んだ。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うっさいわ!騒ぐな!死んでろ!星になれ!」


この人は助けに来てくれたんじゃないのぉ……?