六はさっきから地面に両手をつけ、目を閉じ、まるでイースター島のモアイ像のようにピクリとも動かない。


みきりさんの方は「お互い正面衝突しなければいいんだけどねー」と意味深なことを呟くと、陰の方に止めてあった漆黒のBMWにさっそうと乗り込み(全面マジックミラーだった!)、さっさとどこかに行ってしまった。


国家権力御用達と正面衝突なんてしたらと思うと、うう……鳥肌が立つ。


しかもあんな綺麗な人が、無口な偏屈しかめっ面の六とどんな関係だったのかは、結局分かんないままだ。



ザッ


六は座り込んだ時と同じ様に唐突に立ち上がり、何かを目で追うように廃工場を見つめる。


「そうか……そういうことか……!」


呟いた六は眉間のシワをさらに深く寄せていた。


その顔にはもはや、欠片も笑顔はない。


振り返る。


私の顔を直視する。


「あんた……」



パシュン



あ……


耳元を、何かがかすめる音が聞こえた。


何かが弾ける音がした。


六の体が、無理な体制に捻れながら吹き飛ぶ。


地面に叩きつけられた六の体から真っ赤な液体が流れ出る。


「が……っ……!!」


「六!?」


私は訳も分からないまま六に駆け寄った。


「来るな゛っ……!!」



パシュン