「…………うーん、ときめかない……」



私は、ホームページの片隅に並ぶ『アブナイ恋』や『壁ドン』などのワードを見ながら、小さく溜息をついた。


――そう。私は失恋して以来、恋愛小説を読んでもほとんどときめかなくなっていた。


いま人気の俺様男子の言葉を読んでも、ぶっきらぼう系男子の些細な優しさを読んでも。


全てはフィクションなんだと。


そんな事はなかなか現実には無いんだと。


そんな『冷めた自分』が邪魔をして、純粋に恋愛小説を楽しむことができなくなってしまっていた。


当然、そんな状態で書いた自分の文章に納得できるはずもなく、最近の私は小説を書いては消し、書いては消しの繰り返しだった。



「あーもー、埒があかないっ!」



私は席からガタッと勢いよく立ち上がると冷蔵庫を開け、中から缶チューハイを取り出した。


カシュッという小気味の良い音をさせながら開けたソレを一口あおってから、私はポソリと口を開く。



「…………そっか。もう私、大人なんだよなぁ……」