でもそれは、決して噛み合っていない訳ではない。


「あいにく、こんな時に平静を装えるような男じゃないからね、俺は」


「でも、こんな事で潰れるような男でもない」


「随分と俺を高く評価してくれるんだね。


嬉しいよ」



「俺の評価なんて1円にもならない。


戯言だと思った方がいい」



「今は金よりそんな言葉の方が俺にとって余程価値があるよ」



「それはそれは」



彼はグラスの中のお酒を飲み干すと、


鞄の中から財布を取り出す。



「会計を頼む」



「愚痴を言いに来た訳じゃないみたいだな」



「愚痴を言う相手に恭也を選んだりはしないよ」



彼の言葉に少し笑みを浮かべ、


そして真剣な顔をすると、


静かにも力強い口調で恭也は話した。



「いいか、あんなガキ1人失ったくらいでくたばんじゃねぇぞ」