ハラハラと桜が散る、この季節。2年生に進級して、2ヶ月がたとうとしている。
浜崎夏帆(ハマザキ カホ)は黒い髪をなびかせながら、無駄に広い屋上で親友の
小林真希(コバヤシ マキ)と昼飯をとっていた。
『うんめー!』
華やかなお弁当を片手に夏帆が女子らしくなく叫んだ。
その隣で、真希が 元気だねぇ とババ臭いことを言っている。
『ごちそーさまでした!』
と手を合わせ、いつものセリフを言う。
『真希!今日もおいしかった!ありがとう!』
ニカッと笑いかける。それに真希が よかった と返す。
この光景は日常的なものになりつつあった。
3年前に両親を亡くした夏帆の為に、料理が好きな真希が夏帆の分までお弁当を
作って来ていた。そんな些細なことでも、真希の優しさや、自分への信頼感が
傷ついた夏帆の心を癒していた。
『いやー!真希は本当に料理上手だね~』
この言葉も、お決まりだった。
「それ、何回目だろうね。」
何回、いや何十回も聞いてきた夏帆のその言葉に、真希は安心していた。
夏帆は えへへ と照れるように笑ってから、
『でも、何回でも言うよ!真希。いつもありがと!』
ドストレートな夏帆の言葉に、真希は言葉が詰まる。何回かありがとうと
花が咲きそうな笑顔でいわれたことはあったが、不意打ちだった。
「うん・・・///」
真希がうつむきながら照れ顔で応えた。
キーンコーンカーンコーン
真希とたわいもない会話をしていると、昼休み終了の合図がなった。
2人は立ち上がり、 行こっか と互いを見ると屋上を後にした。