「ちのー、ねぇちょっとこっち来て!」
『え?…、何でさ。』
「いいから!」
音楽が流れるイヤホン越しに小さく声が聞こえて、私は返事をしながら"それ"を耳から外す。
今日は、中学を卒業して高校生活にすっかり慣れ始めてきた、7月の休日。
さらに詳しく言えば、土曜日の午後3時。
部屋にある扇風機は首が止まっていて、ベットの上には漫画が数冊散らかっていた。
「これ!これ見てよーっ」
『んー?』
手に持ってる写真をドヤ顔であたしに見せつけてくるのは、中学の時一番仲が良かった友達。
《柊木夢ーヒイラギユメー》
親と喧嘩したらしく、大きなリュックを背負い、昨日の真夜中、私の住むマンションに転がり込んできたのだ。
『…何これ?』
その夢が見せてきた写真を見て口から出てきた言葉は、語尾にはてなマークがついたもの。
私は両手でこしこしと目を擦る。そしてもう一度その写真を見た。
「なによ、反応うすいなー」
『反応て、夢は"ちの"に何を求めてるの』
つまんないのー、そう言う夢を横目に、もう一度写真を見る。
そこには、カラフルな髪の毛をしてる不良らしき人物6人くらいがピースして写っていた。ただ、皆さん揃って顔が笑ってない。