公園の大きな銀杏の木

(懐かしいなぁ…)


あたしは木の下まで走って行く。


銀杏の葉の間を抜けた滴があたしの頬に雨が滴る。


『彩羅!…』


左耳に感じたあたしの名を呼ぶ方へ目をやると…


走りながら光がやってきた。


『おぅ!雨降ってきたなっ』

そう言って濡れたあたしの頬をタオルで拭いた…

―――(やめてっ)

その瞬間あたしは一歩後づ去りをした…。



気まずい空気が流れる中…

光が口をあけた…。


『懐かしいなぁ…この木…お前覚えてる?』

純粋に言う言葉なのか…

あの頃を思い出してるのか…

光の笑顔に少しだけ…


ほんの少しだけ…



あの頃の二人を思い出した



ファーストキス――



震える彼の唇

赤らむあたしの頬…


中学3年の夏だった




『タイムマシーンあるなら戻りてぇ〜!』

あたしは、ハッと我に返る
(何を…思い出してんのよっ!馬鹿なあたし…)