「知っていたよ。わざわざ隠すようなことでもなかったし、芽衣にはなんでも本当のことを言いたかった。無理やりだったとはいえ、そういうやつと一緒に出掛けたなんて情けないよ。それも芽衣をいじめていたなんて、最悪だな」

 彼は苦々しい表情を浮かべたまま、髪の毛をかきあげる。

 私は彼が犯人ではないと確信するために、言葉を綴る。

「本当はあなたが関わっているんじゃないかって思っていました。でも、違っていたんですね」

「芽衣の復讐か」

 その言葉にドキッとする。

 彼の言葉が夕日に解け入っていく。

「できるならやりたいよな。君からその話を聞いた今なら、心からそう思うよ」

「気持ちは分かりますが」

 彼はほんの少しだけ微笑んだ。

「しないよ。芽衣はそれで俺が警察につかまったり、問題になったら悲しむと思う。だから俺には言わなかったんだろうな。芽衣は俺の夢を一番に応援してくれていたんだ。夢を叶えることが、今の俺にできる唯一のことだから」

 私は彼の言葉にほっとする。
 彼は芽衣を本当に好きだからこそ、未来を生きることを選んだのだろうう。

 だが、彼の言葉はそこで止まらなかった。

「でも、その相手には感謝しているよ。それだけそれだけ芽衣のことを考えてくれていたんだろうな」