「ちょっと待ってよ」

 その声は別のところから聞こえてきた。羽根田晶子だ。

「私は馬場さんのこと好きじゃないし、軽蔑しているけど、結局、芽衣を何らかの形でいじめた人が標的になっているんだよね。なら、私達もいずれそうなるの?」

「俺はほとんど話をしたことはないし、関係ないよ」

「でも、いじめは遠くから見ているだけも悪いという人もいるんだよ。私だって永田さんと仲良くはなかったけど、いじめを見て見ぬふりをしていたの。だから、いつそうなるか分からない。永田さんの復讐かもしれない」

 その言葉にクラス中が沈黙する。みんな心のどこかで自分が標的になることを恐れているのだ。

「永田が復讐しているなら仕方ないよ。でも、これが生きている人間がしていることなら、犯人捜ししようぜ。こんなプライバシーに侵害をされたくねえ」

 その吐き捨てるような伊田君の言葉に、クラスの大半が同意していた。

「まずはみんなの荷物検査からだな」

 そのとき午前のホームルームのチャイムが鳴る。
 そのため、荷物検査は放課後までの空き時間を活用することになった。