泣いてしまった。頼れる猫さん像が崩壊。
はぁ と溜息をつくと、そろそろっと少年が寄ってくる。

 どうしました?

 なんでも

 なんか、変ですよ?

 誰が?

 猫さんが

 お前に言われたくねえよチビ助

このしゃべり方も、強い感じを出したくてやっているのに泣いちゃったら…ねぇ…
はぁ とまた溜息をつく。
やっぱりこんなキャラは向いてない。
でも少年も気が弱い。私も気が弱い。
こんな二人組だったらナメられるだろう。

 あぁ…

 猫さん、僕、夢を見たんだ。

 どんな?

 姉さんと遊ぶ夢。
 変だよね。姉なんて居ないのに。
 それどころか、家族もいない。

どこか哀しげな少年の瞳は夕暮れによって赤く照らされている。
じわじわと、涙が浮かんでくる。

 僕の側にいてくれるのは、
 猫さんだけだよ…

耐え切れなくなり、涙が落ちる。
はらはらと落ちていく。

 え!猫さん!?どうしたの!?
 やっぱ変ですよ!

 居るよ

 え?

 ここに…ここに居るよ。シェリス。

 それ、僕の…

 大丈夫、大丈夫だから

泣かないで と言おうとした。
首を掴んで高く持ち上げられる。
どうして…?何が気に食わないんだ。

 なんで知ってる?どうして?

 か…

 あんた、何者なんだよ

 く…ぁ…

ダメだ。苦しい。どうして?
聞きたいのはこっちだよ。
どうして首を絞めるの?苦しいよ…

 …っ怖いよ…!

 っ!?

急降下する。酸素が肺の中で暴れる。
かはっ と入りすぎた分を吐き出し、
少年を見上げる。
大きく見開かれた目は動揺に揺れている。

 ご、ごめんなさい…僕…

頭がクラクラする。
手当したばかりの包帯に、鮮血がつく。
元々貧血気味の私は、倦怠感に逆らえず、
そのまま沈んでいった。