「え、そんなことないですよ!あ、もしかしたら…暑さのせいでぼーっとしてるのかも」

へらへらと誤魔化す私。

そうだ、もしかしたら…
暑さのせいで違う感じに思えるのかもしれない。
暑さのせいで、嫌な感じに錯覚してるのかもしれない。
いや、錯覚じゃない。
暑さのせい。暑さのせいであってほしい。

「そうか?無理すんでないよ?」

ぎゅっと、抱きしめてきた真守さん。

ドキドキとしてしまう心臓。
赤くなる顔。
上がっていく体温。

そして、

嫌な感じが…確信に変わってしまう。



…あの女の人の匂い。



そう、違和感は“匂い”だった。