「ところで夏上さん遅いね」



草壁君はなぜか汗を拭きながら言う。






「ねえ、どうして私や野乃葉ちゃんは名前で呼んでくれるようになったのに、沙耶ちゃんは夏上さんなの?」


「そうだね。おかしいよね。でも沙耶ちゃんとは何か呼びにくくて」


「どうして?」


「今まで夏上さんと呼んでいたからかな?」


「そんな前から知り合いだったの?」


「いや、話をしたことはなかったんだ。僕が一方的に知っていたというか」


「どういうこと?」


「高校に入学した頃は夏上さんの方が成績が良かった。つまり夏上さんは僕の目標だったんだ。だから夏上さんを抜くために一生懸命勉強した時期があったから」


「その時に夏上さんと呼んでいたのね」


「そうなんだ。目標だった人だったからなかなか名前で呼べなくて」


「なるほど。沙耶ちゃんも凄い人なんだね」