雪乃視点

「やっ……離してくださいッ!!」

追いかけてきた沖田さんに突然抱き締められた。

だめなの…

関わっては、いけない。










だって、私は穢れてるもの。











思いっきり沖田さんの胸板を押す。

だけど、沖田さんはますます抱き締める腕の力を強くするだけで……


「沖田さんッ!

離して……ください………」


こんな、私は見られたくないの。

沖田さんを穢すわけにいかないの。

ボロボロと涙が溢れ出す。

「……雪乃………」

沖田さんが、私の名前を呼ぶ。

いつもの敬語じゃなくて、ただ、私の名前を呼ぶ。









「雪乃は、忌み子なんかじゃない」









そう、言った。

その時、私の中でなにかが弾けた。









「………な……ない」










今まで溜め込んできたなにかが、弾けて飛び出してきた。









「そんなことッ!!ないッ!!!!!」

「ゆき………」

「私のッ、私の両親はッ、あの人たちに殺されたッ!

私がいたからッ!

こんな白い髪のせいで!

母様と父様は殺されたッ!!

幸せだったのにッ!母様と父様と一緒にいれることが、幸せだったのに!!

本当ならっ、まだ生きて、もっと、もっと、子どもを作って!

幸せに生きるハズの母様たちを殺したのは、あの村の人たちなのッ!

それでも、それでも母様たちを殺す原因になったのは、私だもの!!

そんな、そんな私がッ、忌み子でないはずないッ!!

なんで?なんでなの?!

なんで母様たちは死んだの?!

なんで私は生きてるの?!

母様たちの代わりに私が死ねばよかったのに!!

なんでなの?!」



零れ落ちる涙を無視して、私は叫ぶ。

人気の少ない道のため、私と沖田さんしかここにはいない。

私の嗚咽がこの場を支配していた。

それを破ったのは、

「雪乃。そんなことを言ってはいけませんよ?」

そんな沖田さんの穏やかな声だった。