でも、私の想像は


現実だったんだ。




ハルに好きな人が出来たんだ。
もう私の事は好きでなくなったんだ。


信じたくないよ…






ハルの部屋から駅まで5分もあればついてしまう。


でも、私は電車には乗れなかった。

あふれ出る涙。認めたくない現実。




ハルと別れた…?




ハルと私の恋が終わった…?




本当に?





涙で、なにも見えない。








自分の家まで歩くか‥
一駅の距離。たぶん歩けるよ‥


何も考えたくないし、考えられない。




すぐには、家に帰れない。家族が心配する。
気がつけば、涙が止まらなくなってる自分に気づく。




心が‥ボロボロの私は‥





ただ

歩いて

歩いて


何十分かけて
家路にたどり着いた。






「おかえり」

いつもの、姉の声。





「‥ただいま」

いつもの、私の声。

あれ

普通に声が出る。




夢のような悲しい出来事から一気に、いつもの日常に戻った気がした。

でもすぐに
また不安な気持ちに襲われる。

やっぱり、認めたくない。


ハルとの別れ。






「ご飯、食べた?」

いつもの、日常。母のような姉の…いつものセリフ。



「…食べてないけど、今日はいらない」

私は姉の顔が見れなかった。泣き顔の跡は見せられない。
 



「ハルくんと、喧嘩でもした?」

いつもと違う私の様子に、姉が気がついた。




姉の声に、私の噛みしめた唇が震えた。無言のまま、自分の部屋にすばやく入り、ベッドに潜り込む。




「大丈夫?」

姉の心配そうな声が聞こえても、今の私には答える余裕さえない。



ベッドの中で、いつもの自分の部屋の天井を見つめる。



いつもの天井。


あれ…
いつもと同じ夜だよ。




さっきのは夢?
私とハルは、別れてなんかない。



喧嘩だよ。ただの。
さっきのは。


涙も枯れて、ぼんやりそんな事を考える。


涙が渇いて、肌がつっぱる。


違う。本当に別れたんだ。
今日、ハルと私は…



ハルのあのこわい表情が、頭によみがえる。




「出ていって」

ハルは…ハルは、そう確かに言った。



ハルと、別れた。



また、本当の現実に振り戻される。




嘘であって。お願い。


でも、本当の事なんだ。



ハル…

本当に、もう会えないの…?


現実、受け止められない。
別れたくない。



別れたくないよ‥


翌朝、目が覚めてもぼんやりしてる。


たぶん、1時間か2時間しか眠れてない。
涙で、目が覚める。夢の中ではハルと普通の日常だった。


ぼんやり見た夢。普通の変わらない私とハル…



バイト、休みたい。


でも、行かなきゃ。


こんな時でも、バイトは休めないと思う。

私は、意外に大丈夫なのかもしれない。





起き上がり、顔を洗い歯を磨き、鏡の自分を見た。



「はれてる…」 
ひとりごと。思わず声が出る。


ひどい顔だった。
当たり前か…あれだけ泣きはらしたら。





やっぱり、現実。



現実なんだ。