神戸のキラキラした夜景は



私とハルの未来のよう




ずっと、キラキラしたまんま



続いてく…



そう信じていたのに。













高校二年の秋。私の修学旅行の日、新大阪まで送ってくれたハル。



新幹線に乗って、九州に三泊四日。

「あゆ、後でこれ読んで」

手渡されたのは、ハルから私への手紙だった。





「えー。…嬉しい。何書いてるの?」

ハルは柄にもなく、たまに私に手紙を書いてくれた。
普段、無口なハルから、私は手紙でたくさんの愛をもらう。



新幹線で、開けてみたハルからの手紙。
私の一生の宝物。








愛しいあゆへ


あゆは、いつも元気な笑顔で俺のそばにいてくれるけど、いつも何か我慢してないかって心配になる。

あゆは、お母さんの事もあっていつも大変なのに、あゆを見てたら、俺なんかと付き合ってくれて、可哀想と思う。

こんな俺やけど、少しでもあゆの力になれたらなっていつも思ってる。


こんなに頼りない俺の事、いつも好きって言ってくれてありがとう。


修学旅行では、友達といっぱい楽しんでおいで。


また、帰ってきたら電話くれ。


またかと、あゆは呆れるかもしれないが、俺はあゆと早く結婚したい。マジで、本気の本気。


気をつけて、楽しんできて。



あゆがいないとさみしいハルより








いつも、恥ずかしいほど照れる内容。



愛されてる幸せ…本当に感じた。




ハルの普段のクールさからは、想像できない。


一見、冷たそうに見えて

私には世界で一番、優しくて

大切なひと。







高3の冬。12月27日。



二年前、ハルがお母さんの事、話してくれた。


二年経った、その日。




母が、突然、意識不明になり



亡くなった。









病状も少し落ちつき、退院して家で療養していた。

少しずつ、元気になっていたのに…




私は冬休みで、最後の日、母と過ごしていた。

昼には、一緒にうどんを食べて、こたつの中でテレビを見てゆっくり過ごしてた。


夕方、5時を過ぎてから、母が急に声を殺して泣き出した。


「お母さん、どうしたの?」


私が母の腕に触れても、何も言わないで泣くだけ。


「どうしたの?トイレ?」


とりあえず立たせてトイレに連れていった。


母の様子…おかしすぎる

私は、不安で一杯になった。





母は、涙を一杯流して…


それから…大きないびきをかいたかと思うと



それから意識を失い、倒れた。


声を殺してたんじゃない。
もう、声も出ない状態だった…





その日、長い時間かけた手術の甲斐もなく



母は、この世を去った…




お通夜の日…ハルは


仕事先のトラックで、作業着のまま、かけつけてくれた。



何も言わず、ただ、ただ肩を震わせ泣きじゃくる私のそばで、手を握ってくれてた。



私は、二年前にハルがお母さんの死のこと話してくれた事を思い出した。


枯れ葉の舞う、あの公園で…









「あゆは、おかんに似てるとこがあって、…なんか嬉しい」


ハルのお母さんに似てる…ハルのその言葉が、嬉しかった。ハルと私が、すごく近い距離にいるようで。


18歳でお母さんを亡くしたハル…

その後、たまたま恵美ちゃんが持っていた入学式の写真を見て、お母さんの面影を感じ、私を見つけてくれた。


それからずっと、私のそばで私を支えてくれたハル。




そうして、私も…18歳で母を亡くす。

何か、運命…感じた。 



二人の母が巡り会わせてくれた…そんな気もした。生まれてきた時から、巡り会う事が決まってた。



そう…感じてた…



ハルと私は運命の人だって…ずっと。