ハルは高校を卒業し、工場に就職した。



平日に会えなくたったけど、相変わらず週末は私のために時間をつくってくれた。


やっぱり、私はハルの背中が好き。
ハルのバイクにしがみついているときが、私の一番好きな時間だった。

ハルはあの頃、私の母のこともよく気にしてくれて、デートの途中に、いつも病院に寄ってくれた。

私はそんなハルの気遣いが、すごく嬉しかった。


そんなある日。

「…あのさ、お母さんがハルに会いたいんだって」


倒れて一年経っても、まだ退院できなかった母。
ハルは、いつも外で待ってると病室までは来たことがなかった。


私も、母は手術の時、頭を丸坊主に刈られたし、記憶も曖昧の日が多かったから、いつもハルには一緒に来てと言えなかった。


ハルも病室まで行くのは、さすがに嫌だろうと思ってたんだ。だから、ハルはやめとくって言うと思った。



でもハルは、

「ああ。行くよ」

そうすぐに答えたんだ。すごく嬉しかった。




ハルを見て母は

「格好いい彼氏だね。あゆがいつもお世話になってます。ありがとう」


って、いって微笑んでくれた。ハルはぺこりと頭を下げてから 



「あゆさんと、お付き合いさせてもらっています。よろしくお願いします」

ハルらしくない大人の挨拶に、ドキッとした。



あの時、もしかして私はハルのお嫁さんになれるんじゃないかって、初めて思ったんだ。