本当に、馬鹿な私…。
本当はハルが私に覚めちゃった事
とっくにわかってたんだ。
それでも私は、離れたくなかった。
だから、私はハルに…
しがみつく事しか出来なかった。
一人で泣いて、一人で考えて…
そうして、自分をごまかしながら、ハルの事を信じるようにしてたんだ。
とっくに終わっていた恋に、しがみつく事しかできなかった、惨めな私…
わかってた。
3年半前に知り合った。
ハルは知り合ってすぐに、
私の事を好きって言ってくれた。
いつも手を繋いでくれた。
ハルの手は本当に温かくって…大好きだった。
私はハルに甘えてばかりいた。
愛されている。その心地よさに酔いしれて…
そんな私たちの恋は…
もうとっくの昔に、終わっていたのかもしれない。
そんな事を考えているうちに、バスは駅につく。
私は一番最後に降りて、駅前のバイト先まで急いだ。
制服に着替えて、カウンターにつく。
私はショッピングセンターのサービスカウンターで、アルバイトをしている。
案内業務と、商品券、煙草の販売が主な仕事。
駐車場の入り口にあるから、買い物ついでに、友人なんかもよく会いに来てくれた。
でも、今日は誰にも会いたくなかった。
でも、ぼんやりと私は駐車場の入り口ばかり見てしまう。
ハル…
ハルがそこから、入って来てくれる気がして…
バイトを始めても、一度もここに会いに来てくれた事なんてなかったのに…
ハルと初めて会ったのは、私が高校一年。
ハルが三年生の秋だった。
私立の女子校に通っていた私。
子供の頃から、決して成績が良くなかった私は、公立高校に通うことが叶わずお金のかかる私立高校に進学した。
裕福ではなかった家庭。母は一日、食品工場のパートに出て、私の学費のために働いてくれていた。
私が入学して、一ヶ月。
昼休みに、廊下で友達とわいわい話していた時に、担任の女教師が早歩きでやって来て、私の肩に手を触れた。
びっくりして、振り返るとこう告げられた。
「お母さんが職場で突然倒られて、病院に運ばれたそうよ。早く用意して、今日は早退しなさい。」
突然の事に何がなんだかわからず、私は急いで教えらた病院まで急いだ。
「行ってらっしゃい」
今朝、そう言っていつもと同じようにお弁当を持たせてくれた母が倒れた。
そういえば今日は、私の奨学金の事で学校に来るって行ってた。仕事、休まないで、途中抜けて来てくれるつもりだったんだ。
母はきっと焦ってたんだ。
高血圧で、今朝、薬を飲み忘れた母は…
職場で、突然、脳内出血を起こし
意識不明に…なった。
私が病院についた時には、もう手術が始まっていて、すでに待合室には、父と姉が来ていた。
母の無事をただ家族で願った。
何時間もの手術が終わり、手術室から出てきた母は、頭を丸坊主に刈られて
顔色が全く無かった。
手術は、一応成功したらしいが、
記憶障害など目が覚めないとわからないと
主治医から告げらた。
また、右の脳で出血したため
左半身不随の可能性は高いと…
家族みんなが、悲しみに暮れた。
私の学費のために、母は無理をして倒れた。
そう思った。
私のために母は、40代の若さで
寝たきりの病院生活になってしまった。
私の、せい。
家族の誰もそう口にしないけど、私は家族のみんなから責められている。
そんな気がした。
私は…いつも、罪悪感で一杯だった。
私がお金のかかる学校に進学さえしなければ
母は無理をすることもしないで済んだのに…
私が…悪いんだ。そう自分を責めた。
母が入院して半年が過ぎ、秋になった。
意識が覚めてしばらく、母は家族の事がわからなくなっていた。脳を損傷しているから仕方ない。
でも、つらかった…
病院にお見舞いに行くと、子供の私の事もわからず
「どなたですか…?」
と言われた時は、かなりきつかった。
でも、半年、時は過ぎ…
ようやく母は家族の事を思い出してくれたんだ。
「あゆ、いつも来てくれてありがとう」
って。
涙が出るほど、嬉しくて
安心した。母の手の温もりにも。