冷静になんてなれないし

どうなるなんてわからないし


ハルは私にはもう会いたくないと思ってるかもしれない。


喧嘩…になるかもしれない。



でも、私はハルにどうしても会いたかった。

とても冷静になれない私が、その後の私の運命を決める。


バイトのお昼休み、たとえ10分でも会いたくて
私は、制服のままバイクでハルの部屋へと向かった。







自分はどうしたいんだろう

ただハルに優しくされたかった。


いつも電話で喧嘩みたいに突き放されても
会えばいつも普通に戻ってるハルがいる。

今日も

ハルはいつものハルに戻っていて

私は

ごめんね。ハルが大好きだからと言って。

ハルは抱きしめてくれる…




そんなふうに考えたかった。
インターホンを押してみる。

鍵は…やっぱり開けられない。
ハルが開けてくれる。

そう願う。


ドアが中から開いて、え…って思う。


「お邪魔してます。あゆちゃん、制服じゃん」

ハルの部屋の中から出てきたのは、ハルの中学からの友達。


私のはりつめた気持ちが少しだけ解ける気がした。


「ごめんね。ハルの顔、ちょっと見に来ただけ」

友達、やっぱり来てたんだ。

ハルと二人で話をしたかった。
でも、友達がいて安心した気持ちもあった。


今日は何事もなく


またハルと私の明日が続くと信じて。







でも、ふと玄関に女物の靴を見つける。


胸騒ぎを覚える。


リビングまで入っていく前に女の子の笑い声が聞こえた。


女の子がいる。今日、まさかいるなんて思わなくて
恐る恐る でも全然気にしていないふりをした。


「あゆちゃん…ごめん。お邪魔してます。ひさしぶり」

もうひとりの友達が声をかけてくれた。
でも、なんかぎこちない。その横に一人のロングヘアの女の子が座ってた。




「私の方こそごめんなさい。みんなで楽しんでいたのに」
そういいながら、知らない女の子が気になる。

私のいない時間の…この部屋。
やっぱり私は、邪魔なような気がした。

ハルは、ぎこちない様子で私を見ない。

もしかして、無視…?
やっぱり強引に来られて怒ってるのかな。


「私も横に座っていいかな…」
ハルの横に、腰かけた。

無表情のハル。


「制服でくるかよ」

ハルがボソッ言った。


「うん。すぐに帰るから。着替える時間もったいないでしょ」
ハルに向けて笑いかけた私の顔がひきつる。

「だから来るなって言ったのに」



ハルは、すごく私にむけてうっとうしそうだった。
確かにえんじのブレザーの制服は少し恥ずかしいし、カッコ悪いかもしれない。


ハルは、私にそれだけ言ってその後は私の知らない話題で友達たちと盛り上がる。


恥ずかしい。
やっぱり、来なきゃよかったかも。

私だけ蚊帳の外って感じ…
たまにチラチラ見てくる知らない女の子が気になるし。

お前、誰よって聞きたかったけど

私がみんなの会話に入るタイミングさえわからなかった。





気まづすぎる。


「…私、仕事にもどるね」
そういってすばやく立ち上がった私にハルが言った。


「何しにきたの」


え…何、そんな言い方ないじゃん。
その言葉でもう、私たちの恋は終わったのかもしれないって正直思った。


「だから、来なくていいって言ったのに」

私を背に、私でなく友達にむけて話しているようなハル。
独り言なら声に出さなくていいよ。


逃げ出すように玄関にひとり向かう私。


ハルのさっき鍵を開けてくれた友達が、気にして玄関まで来てくれる。

「ごめん。大丈夫。楽しんでゆっくりしていってね」

私がそう口にしたと同時にインターホンが鳴った。


「あれ、まだ友達来るんだ」
壊れそうな心隠しながら平静をよそおう私。
ロックを開けて、扉を開けた。


またショックを受ける。大きな風呂敷をもった女の子。
全然可愛くない。キツネ目の意地悪そうな顔。


ハルは…見送りにもきてくれない。

なに?この女の子。さっきからいる子も何なのよ。


私は頭がおかしくなりそうだった。不安でいっぱいだった。



「あ、こっち。入って」
中からハルが出てきてその子の肩を押した。

その女の子は私には何も言わず、私の顔を見てふーんって顔をした。


なに…うそ…


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