ハルは私をにらみつけ、大きな声を出した。


「…ふざけんな!何こそこそ、やってんだよ」



「え…ごめん。何もそんなに怒ることじゃないじゃん」

私はびっくりして…どうしてハルがそんなに怒るのか、わからなかった。



「…帰れよ。俺に隠してでも、そこまでして免許とりたいのか?」


今度は、私がハルをにらみつけた。







「隠し事なんて…ただ、私は、私の意思で免許取りにいってるだけで、ハルに許可もらう義務ないじゃん!」



ハルはまだこわい顔をしていた。


「だから、もう帰れよ。お前と話してても、楽しくない」


ハル…なんで?



私は、思わず涙がこぼれた。



「帰るよ。ハルの隠し事の方が…もっと…」

私はそう言いかけて…教本と鞄を抱えて玄関に向かった。







なんで?


私は、悪くない。



なんで?



ハルの浮気を責められないの?



泣きながら、バイクのエンジンをかけた。





もう…ハルとは…さよならなのかも…



しれない…







ハルが…わからない。




ハルと私の…


この先…未来があるんだろうか。




涙が止まらず、信号の色がかすむ。



何も見えない。



ハルと私の未来…








ハルから…電話してこない…



ハルは、私と別れるつもりなのだろう。




それでも、私は、




ハルを失いたくない。





ハルの部屋へ向かう私。







インターホンを押すと、ハルは開けてくれる。



ほら…大丈夫。





抱いてって言ったら、ちゃんと抱きしめてくれる。





でも、表情のないハル。




「…私たち…別れないよね…?」

ハルの胸の中で泣くと




「…あぁ」


って、答えてくれた。ほら、大丈夫でしょ?


でも、ハルは抱きつく私の手を払いのけ


…私から離れて、すわる。







ハルからの電話を待った。


私からかけなくても、以前は毎日かけてきてくれた。



3日待って…



1週間待って…



かかってこない。




8日目に、別れの言葉を覚悟して私からかける。



普通のふりをして


「明日、行っていい?」

胸が張り裂けそうな…私は、ピエロ。






「…あぁ。待ってる」


ハルの行動と…返事のギャップにとまどう。



「…私の事、まだ好き?」


「そんなの…言わせるな」


「どっち?」




好きって…言ってほしかった。ハルの言葉は、私の胸に鋭くつきささった。本当に…割れたガラスが突き刺さるように、痛かった。



「…わからない」





わからない。涙がとまらなかった。







「しばらく会わないようにしよう。俺は俺で、大丈夫。…あゆはあゆで…好きなことすればいいよ…」



「会わないって、私と別れたいってことだよね?」



ハルの声は…それから聞こえてこなくて



ちいさなため息みたいな…声がした。



「明日、バイトの昼休みに行く。会って…」



ハルは…



「…そんな短い時間にきて、何になんの?」


明日の夕方まで待てなかった。
でも、今すぐ会って…今、別れになるのはこわい。