嘘であって。お願い。


でも、本当の事なんだ。



ハル…

本当に、もう会えないの…?


現実、受け止められない。
別れたくない。



別れたくないよ‥


翌朝、目が覚めてもぼんやりしてる。


たぶん、1時間か2時間しか眠れてない。
涙で、目が覚める。夢の中ではハルと普通の日常だった。


ぼんやり見た夢。普通の変わらない私とハル…



バイト、休みたい。


でも、行かなきゃ。


こんな時でも、バイトは休めないと思う。

私は、意外に大丈夫なのかもしれない。





起き上がり、顔を洗い歯を磨き、鏡の自分を見た。



「はれてる…」 
ひとりごと。思わず声が出る。


ひどい顔だった。
当たり前か…あれだけ泣きはらしたら。





やっぱり、現実。



現実なんだ。





化粧しても、はれた顔は隠せない。
アイメークは落として、眉を描いてリップだけつけた顔で家を出る。



家を出て思いだす。私のバイクがない事。
 

¨そう。ハルのマンションに置いてきたんだ。


馬鹿な私って、あらためて思う。




仕方ない。遅刻しちゃう。

私はバス停まで、早歩きで急いだ。



バスが一つ前の交差点に止まっているのが見えた。
急いで小走りし、バスにぎりぎり乗れた。




財布、忘れないよね…


そんな事考えながら、空いている座席を一つ見つける。


いつもと、何も変わらない日常を一瞬、感じる。



ふと、窓から外を眺めると、バスの横をすり抜けていく一つのバイクが見えた。


また、昨日の現実を思い出す。


マンションにわざと置いてきてしまった、私のバイク。
階段を駆け降りたとき、とっさに思った。



置いて帰ろう…って。




別れが現実だと、認めたくなかったんだ。 

あのマンションは、ハルと私の未来。


一緒に住むために、契約だって一緒に行った。

単身者じゃ住めないからと、婚約者の欄に私の名前を書いた。




なのに、なんで?
なんで別れなきゃいけないの?


私は…これからどうすればいい?





バイクを置いてきたのは、別れを認めたくなかったからかもしれない。


あんな気持ちで、運転したら事故るかもとか思ったけど、ハルへの当てつけでもあったかも…。




本当に、馬鹿な私…。

本当はハルが私に覚めちゃった事

とっくにわかってたんだ。



それでも私は、離れたくなかった。



だから、私はハルに…
しがみつく事しか出来なかった。





一人で泣いて、一人で考えて…




そうして、自分をごまかしながら、ハルの事を信じるようにしてたんだ。




とっくに終わっていた恋に、しがみつく事しかできなかった、惨めな私…

わかってた。







3年半前に知り合った。

ハルは知り合ってすぐに、
私の事を好きって言ってくれた。




いつも手を繋いでくれた。
ハルの手は本当に温かくって…大好きだった。




私はハルに甘えてばかりいた。
愛されている。その心地よさに酔いしれて…




そんな私たちの恋は…

もうとっくの昔に、終わっていたのかもしれない。