ハルと初めて過ごす、家でのクリスマス。
丸いケーキを買ってきて、二人でお腹いっぱーいって笑いながら食べたよね。
この部屋は、私とハルのお城。
三年付き合って、積み上げてきた居場所なんだ。
ハルの腕の中での安らぎが、私の幸せ。
この何気ない日常が、ふたりの結婚って未来に続いてく…そう思ってた。
あのブーツを見るまでは。
毎日でも一緒にいたかった。でもやっばり仕事もあるし、2、3日に一度、ご飯を作りに行く。
ハルは大体、仕事は定時なら18時過ぎには家につく。
でも、私は19時に仕事が終わって買い物をして部屋につくのは20時半になってしまう。
ハルはよく、店まで迎えに来てくれたけど、もう遅いから食べて帰ろうと言って部屋に行かない日が増えた。
私は出来るなら、部屋で二人で過ごしたかった。でもハルは平日は疲れてるから早く寝たいと言って、私を家に送る前提で来てくれる。
私は、淋しかった。ふたりの部屋があるのに、なかなか行けない事が淋しかった。
だから、大体、私の休みの日だけ鍵を空けて入り、ハルの帰りを待った。
こんなんじゃ、部屋を借りても一緒だよ。
一週間に一度だけ、お昼から部屋で掃除して、洗濯して、夕食とお風呂の用意をしてハルの帰りを待った。
6階の部屋の窓から、ハルの車が帰ってくるのをまだかまたかと確認した。
ハルは、余り普段は電話をくれなくなり、木曜の夜の何時間だけが、私たちの時間になった。
二人でご飯を食べて、二人でテレビ見て、もう帰る時間。
寂しくて、さみしくて、仕方なかった。
「帰るなよ」
ハルはいつも言ってくれた。
「うん。帰りたくないよ。泊まりたい」
でも、最後はいつもきちんと車で、家まで送ってくれるハル。ハルとずっと一緒にいたくて、帰りぎわ、なかなか手を離せなかった。
部屋を借りて、余計にさみしくなった。
本当にハルの事が愛おしい。ずっと、ずっと、一緒にいたかった。
ハルが、帰るなよって言ってくれる。
その言葉は、愛してるって意味だと感じ、私はその言葉を聞くたびに安心した。
でも…しばらくすると、突然ハルからその言葉が消えた。
帰る時間。
「そろそろ…帰るね」
ハルの顔を見て…帰るなよって言ってほしいと思う。
でも、ハルは
「ああ。…気をつけて帰れよ」
この前は、リビングで背を向けたまま…
今日は、さっきまで抱きあったベッドの中から…
そう言う。
平日に仕事に疲れたハルに、家まで送ってもらうのは悪いと思った。ハルにあまり負担をかけたくなくって、私は部屋に来る日はバイクで出勤するようになった。
「夜の運転は危ないから、バイクで来るな。ちゃんと店まで迎えにいくから」
ハルは初めそう言ってくれたけど、バイクのほうが時間短縮になって、ハルと少しでも長く居られると思った。
帰り際、降りるエレベーターでずっと手を握ってくれた。
私がヘルメットを手にしたら、必ず私の顔に手を触れてキスしてくれる。
さみしいけど、幸せを感じる時間だった。
でも、突然…
ハルは、玄関までも見送りにきてくれなくなる。
「じゃあな…」
リビングで、ベッドの中から手を振る。
急に無口になって…
一緒にいても、あまり目を合わせてくれない。
「なんで?なんかハル、おかしいよ」
私がそう口にしても、ハルは無表情のまんま。
「何にもおかしくないよ」
ハルは、なにも言わないまま私を抱いてくれる。
抱いてくれる…
でも、ハルがすごく遠く感じた。
「別れないよね…?私…たち…」
不安で口にしてしまった言葉。
「…なんで?」
そんな言葉じゃ、ハルの本音が見えない。
テレビに目を向けたまま、やっばりハルの心が見えない。