今は2時18分。
家のリビングの時計が見えた。

「えっなんで、家?お母さんは?」
「病院を終わられて今階段上がってきてます。」
「はぁ病院終わったって、それじゃわかんないじゃん!なんで病院に行って時間じゃないの?」
「すみません。わたくしのミスでございます。」
「もう、な…」
ガチャっと玄関の開く音がして、お母さんが帰ってきた。

「ふぅ疲れた…こんなに四階ってキツかったのね。体力落ちたなぁ。」
《やっぱり何かの病気なんだ…なのに私は…》
「これからが勝負なんだから体力つけなきゃ。あっ春樹さんに電話電話!」
《お母さんもお父さんのこと名前で呼んでたんだ。私の前ではいつも、お母さんお父さんだった。》
「あっ春樹さん?やっぱり間違いなかったって!!」
『本当か!?わかった。今日早く帰るから!』
「待って。汐梨にはまだ言えないわ。だから、いつも通りにして。」
『わかった。そうするよ。帰ったら話そう。』
「うん。お仕事頑張って。」
『うん。ありがと。』

電話を切った後お母さんはテーブルに座って考え込んだ。
『なにを考えてるんだろう…。』
「気になりますか?」
「そりゃもちろん!」
「では、また意識を集中してみてください。」
言われた通りにしてみる。
お母さんの声が聞こえてくる。

『汐梨は敏感な子だわ。それに隠してるけど、今汐梨はなにか抱えてる。学校や友達のことで、なにか悩んでるのかしら…』
「おぉ母親という生き物は凄い洞察力なんですね。」
バステトの言う通りだと思ってた。
私は両親にだけは知られたくなくて、隠してたのに。
『でも聞いたところで言ってくれそうにないし…この事春樹さんに言った方がいいのかなぁ。いや、こんなこと思ってるなんて汐梨が知ったら嫌がるし…私の思い過ごしかもしれないし。今は今日のこと、どうやって汐梨に伝えるかよね…』
何を悩んでるんだろう。お父さんと話し合わせてまで隠すなんて…。
お母さんは顔を上げると何処かに出掛ける準備をしだした。
『駅前の喫茶店でも行こうかな。ちょっとこれから要る物も見たいし!』

「バステト追いかけよう!お母さんどっか行くみたいなの!」
「いいえ、行けません。」
「えっなんでダメなの!?」
「お母様にもプライバシーはございます。」
「はぁぁぁ?!それ理由になってないから!」
「どうであれ駄目なものは駄目です。諦めてください。」
『なによっ!バステトってやっぱりケチだ!』
「はい、ケチで結構です。」
また気持ちを読まれたあげく、言い切られ何も言えなくなった。
諦めるしかないらしい。