「もう予定してた時間を1分35秒過ぎてますので、そろそろ、おいとましようかと、思ってます。」
尻尾で器用に懐中時計を引っ掛け見ながらバステトが冷たく言った。
「美月、元気でね。」
「汐梨、またね。」

またバステトがクルリと一回転した。
とたんに、私とバステトは美月に見えなくなった。

「バステトさっきの言い方なんか冷たかったよ。」
「そうでもしないと、お別れしにくいでしょう?!」
「バステト〜!」
テレながら言ったバステトが愛しくて抱きついた。
「やめてください!!猫扱いしないでいただきたい!!」
「そんなこと言って喉鳴らしてんじゃん!」
ゴロゴロいってる、この音が心地いい。

「バステト…美月に会わせてくれて、ありがとう。お陰で少しだけど、スッキリした。」
「わたくしは何もしていません。汐梨様が会う事をお決めになられたので、わたくしはお手伝いさせていただいただけでございます。」
「謙虚だね〜。」
バステトのアゴの下を撫でる。気持ちよさそうに、伸びをする。
「やめてくださいってば。懐かないでください!」
「ごめんごめん。」
「あっお伝えすることが、あります!先ほどの美月が心から願われた、お一人でございます。」
「そっか。そうだったんだ。」
「それと、先ほど会われた時間ですが、美月の記憶からは消させていただきます。」
「なんで?」
「このバステトの使命は汐梨様に考える時間を与えることが目的です。美月様の会いたいを叶えるのが目的ではございません。それに、ない方がいいのです。先ほどの時間は美月様の夢の時間に変えさせていただきます。」
「わかった。夢ってのでもいいや。」
「では、次の方のところに参りましょう。」
「はぁ〜い。」

まだまだ暗い夜空を黒猫と幽霊が飛んでいく。