あれからバステトは私を高校に連れてきた。
「汐梨様、先程の礼央様が最後の会われる方でした。」
「そっか…」
「一応聞きますけど、どうしますか?生き返りますか?」
「もちろん!」
「ここに戻ってくるんですよ!」

『あぁだから、ここに来たんだ。』
「はい。ここが汐梨様に決断させた原点ですので…」
「そうだね…」
校門から校舎を見てると、初めてこの道を通ったことを思い出す。
期待と少しの不安の中でいっぱいだった一年生。まさか二年後自分が自殺するなんて思ってもみなかった。
私はまた、ここに来るんだ。
でも、もう大丈夫だって思える。
私は一人じゃない。
お父さんもお母さんもいる。
一年後にはお姉ちゃんになる。
私は愛されてる。
頑張れる力がある。

「では、いつに戻りますか?」
「いつって選べるの?」
「はい。今回汐梨様が行かれた時間、つまり先週の日曜日から自殺してしまうまでの五日間の間から選べることが出来ます。」
「じゃ……」
「本当にその時間でいいんですか?」
「うん。その時間がいいの。」
「でも…それはあまりにも危険です。」
「大丈夫!バステト…最後まで心配してくれてありがとう。」
「いえ、わたくしの願いは汐梨様に会って人生を再度初めてもらうことでしたので…。わたくしは満足です。」
「えっどうゆうこと?」
「お別れです。汐梨様とのこの五日間はわたくしにとって、幸せな時間でした。」

体が消えていく。

「待って!バステト!まだ…」
「また会おうね、…………。」

最後バステトが何かを言ったけど、聞こえなくて、私の体は完全に姿を消した。