少しずつみんなの前に私が現れていく。
「汐梨!!ごめんなさい。ごめんなさい!」
「もういいよ。…お願いがあるの。少し舞子と二人で話したい。」
わかったと言って3人が出て行った。
「舞子…ごめんね。」
「なんで汐梨が謝るの?」
「だって、さっき舞子のことならわかってるみたいな言い方したけど、実際には本当の気持ちわかってなかった。ううん、わかってるのに知らないふりしてた。ごめんね。」
「汐梨…知ってたの?私が、その、汐梨のこと…」
「う〜ん、なんとなく、そうじゃないかなって思ってた。小学生になっても、中学生になっても、高校生になっても男の子の話したことなかったじゃん。」
「いつから?」
「小学生になって、どの男子が好きって話になったとき、胸張って、私は汐梨が好き!!って言ったの覚えてる?」
「なんとなく…」
「あの時みんなから、変って言われたのに、負けじと男子なんて嫌い。好きなのは汐梨だけ!って言ったの。その時は意味なんてわからなくて、単純に嬉しかった。」
「気持ち悪いって思ったりしなかったの?」
「正直な気持ち言うと中学生になって少し思った時があった。少し避けた時あったでしょ?」
「うん、朝とか一緒に行かなくなったときでしょ?」
「そう、意味わからない小学生と違って、舞子の気持ちがlikeじゃなくてLoveって気付いた時は正直、気持ち悪いって思って舞子を避けた。でも、そんな私の態度に気付いたのがお母さんだったの。」
「おばちゃん?」
「そう、最近舞子ちゃんと遊んでないけど喧嘩でもしたの?って。」
「それで?」
「違うって言ったら、なにかわかんないけど、さっさと仲直りしなさいって言われて、なにも知らないくせにっ!て。で、勢い任せみたいに言ったの。舞子は多分女の子が好きで、私のことが好きなんだと思うって。
そしたら、お母さん…よかったねって言ったの!?」
「えっ??」
「でしょ、驚くよね!?私も驚いて聞いたよ。よかったってなに?って、そしたらお母さん、真剣に言ったの。」
「なんて?」
「あなたは舞子ちゃんの気持ちを、気持ち悪いって拒絶してるのよって。汐梨がが誰かも好きになった時、拒絶されたらどんな気持ち?って言われた。私が好きになるのは女の子じゃないって言い返した。じゃ、お母さんは、誰が女の子は男の子が好きで、男の子は女の子が好きって決めたのって聞かれた。
そんなの決まってるもんって言ったら。お母さんはお父さんのこと、男の子だから好きになったんじゃない。性格が好きなの。って」
「おばちゃん…」
「世の中には女の子を好きな女の子も、男の子を好きな男の子もいる。みんなその人の体で決めたんじゃない。心で決めただけなのよ。って…。笑って言ってた。そう言われてもすぐには飲み込めなかったけど、舞子を気持ち悪いなんて思うことは間違ってるってことはすぐに、そう思えた。ただ避けた分なんか気まずくて…」
「一年近く別に登校してたもんね…あの時はもう友達でもいられなくなるんだって、ちょっと覚悟したなぁ」
「久しぶりに一緒に行こうと思って下で待ってて舞子が私を見つけたとき、最後のモヤモヤ吹っ飛んだの!どんな理由でも、舞子は違うけど、私も舞子のこと好きなのは一緒だと思って。」
「ありがと。受け入れてくれて…。じゃおばちゃんわかってたんだ…私のこと。」
「ん?どうしたの?」
「火葬場から帰る時、呼びとめて私を抱きしめて言ったの。今まで汐梨を好きでいてくれてありがとうって。幼馴染みのってことだって思ってたけど、わかった上で言ってたんだ…。」
お母さんらしいや。
「汐梨様そろそろ行きましょう」
「さっきの猫ちゃん。」
「バステトと申します。」
「バステトちゃん、もう時間ないの?このまま汐梨いちゃダメ?」
「はい、その願いは聞くことができません。」
「そっか…汐梨。ごめんなさい。ありがとう。」
「うん、あっ愛莉と瀬菜にももう気にしないでって言っといて!」
バステトが後ろにクルリ回った。
「みんな、友達になってくれて、ありがとう!!!」
最後に言った言葉は自然と言えた言葉だった。
私が見えなくなり、みんなが部屋に戻るとその場で眠りについた。
10分後、室内の電話が残り時間を伝えるのに鳴った。
その音でそれぞれが目を覚まし、私たちなんで寝てんの?と言い合いながら、部屋を出ていき、家へと帰って行った。
「バステト…また夢にしたの?」
「いえ、今回は何も…みなさまには眠っていただいただけです。なので、夢と思うか、そうでないかはわかりません。」
「そっか…。」
バステトの優しさの行動だと思った。
「では、次に参ります。」
「はぁ〜い。」