私が高1だった冬の夜。
私は幼馴染みのこーちゃん家に向かった。
行く前に、こーちゃん本人がいるかの確認連絡は入れてある。
というか、今日は本人が居てくれなきゃ困る。居なかったら今日は何の日だと尋問に入らなければならないし。
徒歩5秒以内の圏内で行ける私とこーちゃん家。言わずもがなお隣さんだ。
あっという間に到着し、
そのまま流れでインターホンをプッシュ。
〈はい〉
こーちゃんの声。
既に用意は出来てるみたい。
手を軽く振って見せる私。
手に持っているものは敢えて隠す。
プツンと切れた声。
間もなくしてパッと灯りのつく玄関内。
ガチャッと開いた扉から出てきたこーちゃん。
…何か手に布を持っているではないか。
なんだあれ?
きょとんとしつつ、
こーちゃんを見上げる。
こーちゃん家の玄関先は小さな階段になってるから、必然的に私はこーちゃんを見上げる形になる。
「こーちゃん、はいこれ」
渡した紙袋。
こーちゃんの妹ちゃんの分も作ったので二人分。
こーちゃんは穏やかな癒しの笑顔をくれる。周りが浄化される。心ポカポカ。
でも、体は寒いけど。
「ありがとう」
当たり障りないお礼の言葉。
こーちゃんは階段を降りて
私の真正面に立った。
そして気付く。
ヤツの背が私を越したことに。
「…伸びたな」
「ん?あーそうかも。
あ、はい。風邪引くから」
私の悔しみの言葉を笑顔であしらいながら、ブランケットを肩に掛けるこーちゃん。
紳士こーちゃん参上だ。
「楼ちゃん女の子だし、
体冷やしちゃ駄目だよ?」
「こーちゃんは?」
「俺は男だし、大丈夫だよ」
にこやかな笑顔でそういう彼。
現実でさらりとそういうこーちゃん尊敬。
少女漫画か携帯小説でも読んでんのか?って思うぐらい紳士だぜこーちゃん。
そして彼の紳士度、もとい内面イケメン度は上に上昇していく。
てくてく二人で夜の散歩。
たまにしかやらないが、結構楽しい。
こーちゃんが相手なので
疲れることなく寧ろ一緒に居て楽。
一緒に居た年月は伊達ではない。
「楼ちゃん、こっちね」
くいっと腕を引かれて、
体ごと移動させられる私。
こーちゃんは車道側に立った。
ちょっときゅんと来るぞこれ。
「楼ちゃんぼんやりしてるから、
本当に危なっかしいよ」
「すみません」
年下に注意される一応年上の私。
確実に私の精神年齢は低いと実感。
…若干泣けた。