「な、おい、あれ見てみろよ。」
友達の直樹が廊下を一緒に歩いているときに言ってきた。
「あれって、成川先輩だよな?」
「えっ?」
成川先輩。
僕はその一言で直樹が指差したほうを見る。
そこには成川先輩が3年生の男子生徒といる姿があった。
「なぁ、告白されてるっぽいよな。」
僕は成川先輩のほうを見つめながら頷いた。
それはどこからどう見ても
男子生徒が成川先輩に告白しているシーンだった。
「成川先輩、モテるよなー。
すっげぇ美人だもんなー。まじであんな彼女憧れる~!
あ、そーいえば 祐太って、成川先輩のこと好きだったよなぁ。」
「……まあ、そーだけど。」
僕は一目惚れしたあの日から1年間、ずっと
先輩のことを好きでいた。
先輩に彼氏ができたとか、また告白されたとか、噂はよく入ってきた。
そのたび、少しショックを味わったけど
先輩はモテるのだからしかたない。
先輩が告白されてるところは何度か見たことはあるけど
自分も告白してみようとは思わなかった。
告白したって無駄だし、
僕はただ先輩を見つめているぐらいがちょうどよいのだと思う。
「かわいそうな祐太よ。叶わない恋などしよって。」
「うっせーよ。」
叶わない恋
僕も ずっと そう 思っていた。