「ねえ、愁ちゃん」


レディースブランドのショップで服を選んでいるときに、愁ちゃんに見てもらいたくて声をかける。


少し離れた場所にいた愁ちゃんは、あたしの声に気づかないでディスプレイのマネキンを眺めていた。


何かを思うような顔で。


ねえ、愁ちゃん。
その服は、あたしには似合わないよ。


誰を重ね合わせているの?
その瞳には誰が映っているの?


静かに持っていた服を元の場所に戻した。