1時間前ー……

ハァハァハァ……

教室を飛び出したみちるちゃんに連れられた場所は空き教室。

「どうしたの?」

「…ごめんね?急に走らせちゃって」

みちるちゃんは本当に申し訳なさそうに謝ってきた。



「気にしてないけど、波風くんと何かあるの?」



波風くんを"あいつ"って呼んだり、教室から逃げるような真似したり。

私は絶対何かあると思った。


「……ごめん、まだ言えないや」




その顔は笑っていたけど。

どこか虚しさを感じる顔だった。



「ごめんね、なんか走らせて変なとこ連れてきたわりには理由言えないって。ふざけてるよね?」



「大丈夫!私気にしてないから。それに、ほら!いい運動にもなったし」


これ以上みちるちゃんのそんな顔はみたくなくて明るく言った。


「ありがとう!……悠羅……って呼んでもいいかな?」


肝心の名前のとこは小さくて聞こえなかったけど、言いたいことはなんとなく分かった。


「いいよ!私もみちるって呼んでいい?」


「いいよ!」



その笑顔は本当に嬉しそう。



"波風くん"は分からなかったけど。


私は友達ができた。