全ての事の発端は中学3年の受験シーズンだった。





コンコン

「はい」

「失礼します。悠羅お嬢様、奥様が下でお呼びでございます」


一瞬、執事である青山に何を言われたか理解できなかった。
だって"お母様"って言ったから。


私の家、九条家は日本を代表する財閥であり、また世界にも多くの系列会社を持つ、言わば大財閥。
お母様はその副社長として、お父様は社長もして、世界中あちこちを行ったり来たりしている。
そのためほとんど家にいることがない。


「お嬢様?」

「青山、今お母様がいるって言った?」

「はい。先程………」


私は青山の話を最後まで聞かず、廊下を走った。


「お母様‼︎‼︎」

「まぁ、悠羅、廊下……って仕方ないか。ただいま」

そう言って抱きしめてくれたお母さんは昔のままで。

あたしは泣き出した。