純 恋 -ジュン コイ-
恋を知らなかった私は、高校に入学して恋を知る。
クラスの人気者でいつも元気な君は、私にはまぶしい程輝いていて。
だから心惹かれたのかな?
人を好きになる気持ちを教えてくれてありがとう。
「ギャハハハ、勇心バカだ。」
「寝ぼけてたんだって。」
「ギャハハハ。」
高校に入学して早1ヵ月。
友達も出来たし、クラス仲も割りといい。
朝のHRが始まるまで、みんな思い思いの時間を過ごす。
教室内はガヤガヤと騒がしいのに、あの人の声はハッキリと聞こえる――
私は小松 香澄(こまつ かすみ)、15歳の高校1年生。
どちらかというと大人しくて、まだ恋をした事がない。
「勇心達っていつもバカ騒ぎしてるよね。」
あの人達のグループを見ながら私に声をかけてくるのは、友達の久保みのりちゃん。
通称、みっちゃん。
私とは正反対の性格で、明るくて誰とでもすぐ友達になっちゃう。
「勇心達、何話してんのー?」
すぐ男の子の輪にも入っていっちゃって、私としてはどうしていいのかわからない。
中学の時も男子とあまり話す事がなかった私は、今でも緊張してしまう。
「こいつ、父ちゃんの靴下はいてきてんの。」
「だから、寝ぼけてたんだって。」
「勇心って、ちょっとヌケてるよね。」
「久保ー!」
「ギャハハハ、ごめんごめん。」
こんな風に誰とでも話せるみっちゃんが羨ましい。
みっちゃんと追い掛けっこをしているのは、倉木 勇心(くらき ゆうしん)くん。
クラスの人気者。
本気で追い掛け合う2人を見て、私も思わず笑ってしまった。
「小松まで笑うなんて、ひどいよ。」
走るのをやめた勇心くんがこっちに戻ってくる。
『ごめんね。2人が本気で走ってるからつい…』
すねた顔をする勇心くんに私は申し訳なく謝る。
「だはっ。うそうそ。別にいいよ、笑ったって。」
全然気にしてなく、満面の笑みで勇心くんが私を見る。
ドキッ
とっさに下を向いてしまった私。
「小松?どうした?」
不思議そうに勇心くんは私の顔を覗き込んでくる。
『なっ…なんでもないよ。ちょっとごめんね。』
私は急いで教室を飛び出しトイレに駆け込んだ。
ドキドキ、ドキドキ
鳴り止まない胸の鼓動。
なんだろう、これは…?
チャイムが鳴り教室に戻る。
みっちゃんが私の席まで来て、
「香澄いきなり行っちゃうからビックリしたよ。どうしたの?」
『ううん、なんでもないよ。』
適当な言い訳も思いつかず、笑ってごまかした。
キーンコーンカーンコーン
午前の授業も終わりお弁当タイム。
『みっちゃん、話があるの。』
「どうしたの?」
みっちゃんを引き連れて、人があまり来ない談話室に連れ込む。
「私、お腹すいてるから食べながらでいい?」
『うん。』
すでにお弁当を広げ、みっちゃんは食べようとしていた。
「で、どうしたの?」
『実はね、私、勇心くんと話したり目が合ったりするとドキドキするの。』
思い切ってみっちゃんに話すと、
ブフー!!
みっちゃんは口に入れたお茶を噴き出した。
『みっちゃん…汚いよ。』
「ごめんごめん。」
私はティッシュを取り出し、みっちゃんが噴き出したお茶を拭く。
「ねぇ香澄、それって勇心の事が好きって事?」
『わかんないの。私、今まで恋した事ないから。だからみっちゃんに教えてもらいたくて。』